chapter:Refusal~涙の理由 それが、恐怖で萎縮(いしゅく)してしまった体に染み渡っていく……。 「っふ……」 けっして人前で泣くまいと決意していたのに、もろくも崩れはじめる。 目頭が熱くなって、涙があふれてきた。 「オレ……ジャンビーア、取られたんだ……」 気がつけば、胸の中に押しとどめていた悲しみを、言葉に乗せて話していた。 「父さんの形見だったのに……。今ごろ、どこかに売られてるかもしれない。大切なものだったのにっ!!」 ……ジャンビーアはオレのすべてだった。 父親を早くに亡くしたオレにとって、父さんのジャンビーアは特別だったのに!! 「……そう」 女性は何も言わず、ただ頷くばかりだ。オレの頭を撫でる手だけが止まらない。 優しくされて、涙腺が一気に崩壊した。 「っぅ、うわあああああんっ!!」 オレは、どこの誰だかわからない女性に身をゆだね、泣きじゃくった。 ――その日から、へサームの姿は見えなくなった。 その代わりに……というのか、その女性が部屋にやって来るようになった。 それから4日くらい経った――。 オレの前にあらわれた彼女の名は、バシラというのだと、教えてくれた。 『バシラ』 名前の意味は、『賢い』だ。 彼女らしい、いい名前だと思う。 |