アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





それが、恐怖で萎縮(いしゅく)してしまった体に染み渡っていく……。



「っふ……」



けっして人前で泣くまいと決意していたのに、もろくも崩れはじめる。


目頭が熱くなって、涙があふれてきた。



「オレ……ジャンビーア、取られたんだ……」


気がつけば、胸の中に押しとどめていた悲しみを、言葉に乗せて話していた。



「父さんの形見だったのに……。今ごろ、どこかに売られてるかもしれない。大切なものだったのにっ!!」



……ジャンビーアはオレのすべてだった。



父親を早くに亡くしたオレにとって、父さんのジャンビーアは特別だったのに!!



「……そう」



女性は何も言わず、ただ頷くばかりだ。オレの頭を撫でる手だけが止まらない。




優しくされて、涙腺が一気に崩壊した。



「っぅ、うわあああああんっ!!」



オレは、どこの誰だかわからない女性に身をゆだね、泣きじゃくった。






――その日から、へサームの姿は見えなくなった。



その代わりに……というのか、その女性が部屋にやって来るようになった。




それから4日くらい経った――。

オレの前にあらわれた彼女の名は、バシラというのだと、教えてくれた。





『バシラ』




名前の意味は、『賢い』だ。

彼女らしい、いい名前だと思う。





- 65 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom