chapter:Refusal~涙の理由 自分の家で死人が出たら大変だもんな。 その刺客っていうのが、これはまたおかしい。 だって、そいつは兵士でもなく、男でもない。 「なぜ、そのように悲しそうなお顔をなさっているのですか? わたしでよかったら、理由をお聞かせいただけませんか?」 穏やかな口調の、女性だった。 声質からして、年は60くらいだろうか。 若干、震えるような声のクセがあった。 彼女の身分はオレたちよりも上なのだろう。アバヤっていう黒装束に身を包んでいた。 顔は、黒装束に隠されているから見えないけれど、目が大きいから、きっと美人だと思う。 この国では、いい家柄であればあるほど、昔から言い伝えられている教えを守り、黒装束を身につけるんだ。 いつもなら、放っておけと罵るオレ。 だけど、相手は女性だ。 そんなこともできるはずもない。 オレがただ黙っていると、女性の手がすっと伸びてきた。 「っつ!!」 たったそれだけのこと――。 だけど、体が強張ってしまった。 これほどまで触れられるという行為に怯えているんだ。 それだけ、人買いに捕まったあの日がオレにとって恐怖になっていた。 「かわいそうに。よほど怖い思いをしたのですね……」 優しい声音と、オレの頭を撫でるあたたかな手――。 |