アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





自分の家で死人が出たら大変だもんな。




その刺客っていうのが、これはまたおかしい。


だって、そいつは兵士でもなく、男でもない。




「なぜ、そのように悲しそうなお顔をなさっているのですか? わたしでよかったら、理由をお聞かせいただけませんか?」


穏やかな口調の、女性だった。


声質からして、年は60くらいだろうか。

若干、震えるような声のクセがあった。


彼女の身分はオレたちよりも上なのだろう。アバヤっていう黒装束に身を包んでいた。


顔は、黒装束に隠されているから見えないけれど、目が大きいから、きっと美人だと思う。


この国では、いい家柄であればあるほど、昔から言い伝えられている教えを守り、黒装束を身につけるんだ。


いつもなら、放っておけと罵るオレ。

だけど、相手は女性だ。

そんなこともできるはずもない。




オレがただ黙っていると、女性の手がすっと伸びてきた。


「っつ!!」



たったそれだけのこと――。


だけど、体が強張ってしまった。

これほどまで触れられるという行為に怯えているんだ。



それだけ、人買いに捕まったあの日がオレにとって恐怖になっていた。




「かわいそうに。よほど怖い思いをしたのですね……」



優しい声音と、オレの頭を撫でるあたたかな手――。





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