chapter:Refusal~涙の理由 それなのに、オレの心臓がドクドクと跳ねる。 ――それにまた、オレは、『可愛い』と言われてしまった。 ヘサームといい、バシラさんといい。ふたりしてオレにとっての禁句を簡単に言い放つ。 しかも、やっぱり、『可愛い』と言われてもイヤな気持ちがしないんだ。 ……そういえば、オレ、なんでヘサームに、『可愛い』って言われても腹が立たないんだろう。 ヘサームに抱かれたあの時でさえ、告げられた、『可愛い』がとても嬉しく思えた。 憎いと思っているはずの相手なのに? なんで……? 「バシラ様! 手をお借りしたい!! ヘサーム様が!!」 バタンッ!! オレが考え事をしている中、突然、危機感を帯びた声が聞こえたかと思うと、固く閉ざされていた扉が勢いよく開いた。 ――と、思ったら、カンドーラに身を包んだ男性4人が慌ただしく部屋の中へ入ってきた。 4人のうち1人は、2人に担がれ、項垂れている。 鮮血が、元は真っ白だったはずのカンドーラを広範囲にわたって染めていた。 項垂れている男は腹部を押さえている。 どうやら、出血の出所は腹の辺りらしい。 刺されたのか? だけど、いったい誰に!? そして刺されたこいつは誰? 嫌な予感しかしない。 |