アラビアン・ナイト
第七話





chapter:Refusal~涙の理由





「ヘサーム殿は、媚薬の効果が切れるまで、貴方をここに置いておくつもりです。他の男たちに、もう体を奪われないように……。

でなければ、危ないこの時勢に他人を自分の寝室に入れるでしょうか」



……ヘサームが、オレを庇う?

オレを好き?





頭の中がクラクラする。




バシラさんが話す内容は、オレの思っていた内容とあまりにもかけ離れていた。




「オレ……は……」


オレは、ベッドの上に手をついて、不安定に揺れる体を支えた。




「はじめは、わたしもヘサーム殿のお気持ちを図りかねておりました。

ですが、貴方にお会いしてみると、ご自身の意見に素直で、活発的でいらっしゃる。

それゆえでしょうか、思わず守ってさしあげたくなるような、どこか危なっかしい雰囲気がおありで、とてもお可愛らしい方なのですね。


ヘサーム殿のお気持ち、よくわかります」




バシラさんは大きな目を細めて、そう言った。

口元はアバヤに隠れていてわからなけれど、笑っているように感じる。


血は繋がっていないけれど、やっぱりヘサームの乳母だからなのか、ヘサームとバシラさんの笑い方がとても似ている。




……トクン。


その微笑みを見ただけで、なぜかオレの胸が大きく高鳴った。


ほんの一瞬、オレの目に、バシラさんがヘサームと重なって見えた。


たったそれだけ。





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