chapter:Refusal~涙の理由 「ヘサーム殿は、媚薬の効果が切れるまで、貴方をここに置いておくつもりです。他の男たちに、もう体を奪われないように……。 でなければ、危ないこの時勢に他人を自分の寝室に入れるでしょうか」 ……ヘサームが、オレを庇う? オレを好き? 頭の中がクラクラする。 バシラさんが話す内容は、オレの思っていた内容とあまりにもかけ離れていた。 「オレ……は……」 オレは、ベッドの上に手をついて、不安定に揺れる体を支えた。 「はじめは、わたしもヘサーム殿のお気持ちを図りかねておりました。 ですが、貴方にお会いしてみると、ご自身の意見に素直で、活発的でいらっしゃる。 それゆえでしょうか、思わず守ってさしあげたくなるような、どこか危なっかしい雰囲気がおありで、とてもお可愛らしい方なのですね。 ヘサーム殿のお気持ち、よくわかります」 バシラさんは大きな目を細めて、そう言った。 口元はアバヤに隠れていてわからなけれど、笑っているように感じる。 血は繋がっていないけれど、やっぱりヘサームの乳母だからなのか、ヘサームとバシラさんの笑い方がとても似ている。 ……トクン。 その微笑みを見ただけで、なぜかオレの胸が大きく高鳴った。 ほんの一瞬、オレの目に、バシラさんがヘサームと重なって見えた。 たったそれだけ。 |