chapter:Refusal~涙の理由 「もっ、申し訳ございません!! 抜け荷の現場を取り押さえた翌日です。過激派の連中がうろついているから動かぬ方がいいとお止めしたにもかかわらず、ヘサーム様は奪われた物を取り戻しに行くと、反対する周囲の人間も押し切って!!」 バシラさんの問いで、従者のひとりが口を開いた。 「ヘサーム!?」 それは本当なの? 従者の手を借りてベッドに横になったヘサームは、近づいたオレの右手首に手を伸ばし、鍵穴に鍵を入れ、ゆっくりと回す。 ……カチッ。 オレを拘束していた腕の輪から、小さな金属音が聞こえた。 それは、オレの右腕が解放された瞬間だった。 「君は自由だ。どこへでも好きなところに行け……。だが、もう少し、薬の効果が消えるまでは安全な場所にいた方がいい。 こんな状態の俺では、もし、過激派の連中が襲撃してきたとしても、お前を守ることはできそうにないから……」 虚ろな目は、焦点があっていない。 痛みのせいなのか。以前のような力強さを感じられない。 息が乱れ、玉のような汗を全身にびっしょりかいている。 とても苦しそうだ。 『守る』 たしかに、ヘサームはそう言った。 あなたは本当に、オレを守るために、こうして鎖で繋ぎ止めていたの? もし、それが本当だというのなら……。 ヘサーム、オレは……。 |