chapter:Refusal~涙の理由 「ヘサーム……」 ヘサームに手を伸ばせば、さっき鍵を外した手がオレの顎を掬った。 「……んっ」 気がつけば、オレの口はヘサームに塞がれていた。 「――見たかったのは、けっして涙などではなく、笑った顔……それだけだったのに、な……」 リップ音がするのと一緒に、唇が離れると、ヘサームは苦しそうに顔に皺を寄せ、乱れる息でそう告げた。 ヘサーム? なんで? なんで今、オレにキスしたの? バシラさんが言ったとおり、オレのことが好きなの? 本当に? もし、そうだとしたら……。 自由だと言われて、『はいそうですか』なんて、言えるわけがないだろう? だって、ヘサームはオレのために、身の危険を顧みず、ジャンビーアを取り返してくれたんだ......。 ヘサームがオレと顔を合わせなくなったのは、オレのジャンビーアを奪い返すためだったってことだろう? それって、それって……。 ヘサームはオレを嫌っていたわけでも――男に組み敷かれるオレを醜いと思っていたわけでもなかったってことだよな? ヘサームは、バシラさんの言うとおり、すごく優しい人だったんだ。 もし――もしも、ヘサームがオレを好きなんだとしたら……。 『お前なんかと……王の部下なんかと、同じ空気を吸いたくない!!』 |