アラビアン・ナイト
第九話





chapter:Passion~アティファ





後ろから声がしたと思ったら、さっき払い除けたオレの手が、ヘサームの手に捕まった。




ドサッ。


ベッドに倒れ込む音がするのと同時に、オレの背中に柔らかい布の感触があった。


気がつけば、オレはまた、ヘサームの両腕に閉じ込められていた。




――いや、違う。

さっきよりも、力はずっと強い。



現状を把握したオレは、頭のてっぺんから血の気が引いていく……。


だって、だってヘサームは怪我をしているんだ。


オレの上にのし掛かっちゃダメだ。

せっかくナジさんに止血してもらったのに、悪化したら大変だ。


ヘサームが死んじゃう!!





「やっ、ダメ、はなしてっ!! せっかく出血が止まったのに、傷が!!」


「放せば、アティファは俺の前からいなくなるだろう? だったら、放さない!!」


ヘサームは、いったい、なにを言っているの?




「どんなに過酷な状況であっても、スレていない君を守ってあげたいと思ったのがはじめだ。

話していると、表情がクルクル変わって、もっとたくさんのアティファを知りたいと思った。


出会って間もないのに、気がつけば君のことばかりを考えて1日を過ごすようになっていたんだ。

それなのに俺は……」


そこまで言うと、ヘサームはオレの肩口に額を乗せて黙った。


だけど、両手はオレの腰に巻き付いている。


オレを手放す気はないらしい。




「ヘサーム?」





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