好きと言えない。
第二話





chapter:身代わり~秘めた恋心。







 悠里(ゆうり)の視線のすぐ先には、端正な顔立ちがある。

 威厳たっぷりの虎目石の瞳は瞼というカーテンに塞がれ、長い睫が覆って陰を落としている。

 すっと伸びた鼻の下にあるのは半分開いている薄い唇。

 男性の色香を漂わせた彼、昴(すばる)がいた――。



「すばる」

 安らかな吐息が、薄い唇から吐き出される。

 悠里は、彼の寝息を聞きながら、愛おしい人の名前をそっと口にしてみる。

 けれど、やってくるのは切なさばかりで、胸が押しつぶされそうに痛み出す。



(どうしてこういうことになったんだろう……)



 少なくとも、昴と一緒に暮らすまで……いや、昴と一緒に暮らすようになってから数か月は、こういう関係にならなかった。

 そもそも、悠里が昴と、ひとつ屋根の下に住むことがなければ、このような関係にはならなかった。

 しかし、悠里は、昴とこういう関係になったことを悔やんではいなかった。

 どうせ叶わない想い。

 だったらせめて、身体だけでも繋がったという思い出がほしい。

 恋心に気がついた時から……悠里は密かに、昴に抱かれることを願っていた――。

 泣きそうになる涙を止めるため、唇をぎゅっと噛みしめる。

 悠里の頭の中で繰り返されるのは、昴への恋心に気がついた日のことと、初めて身体を繋げた時のことだ。



――昴と悠里は、母方同士の親戚で近所という事もあり、とても仲が良かった。


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