chapter:身代わり~秘めた恋心。 悠里(ゆうり)の視線のすぐ先には、端正な顔立ちがある。 威厳たっぷりの虎目石の瞳は瞼というカーテンに塞がれ、長い睫が覆って陰を落としている。 すっと伸びた鼻の下にあるのは半分開いている薄い唇。 男性の色香を漂わせた彼、昴(すばる)がいた――。 「すばる」 安らかな吐息が、薄い唇から吐き出される。 悠里は、彼の寝息を聞きながら、愛おしい人の名前をそっと口にしてみる。 けれど、やってくるのは切なさばかりで、胸が押しつぶされそうに痛み出す。 (どうしてこういうことになったんだろう……) 少なくとも、昴と一緒に暮らすまで……いや、昴と一緒に暮らすようになってから数か月は、こういう関係にならなかった。 そもそも、悠里が昴と、ひとつ屋根の下に住むことがなければ、このような関係にはならなかった。 しかし、悠里は、昴とこういう関係になったことを悔やんではいなかった。 どうせ叶わない想い。 だったらせめて、身体だけでも繋がったという思い出がほしい。 恋心に気がついた時から……悠里は密かに、昴に抱かれることを願っていた――。 泣きそうになる涙を止めるため、唇をぎゅっと噛みしめる。 悠里の頭の中で繰り返されるのは、昴への恋心に気がついた日のことと、初めて身体を繋げた時のことだ。 ――昴と悠里は、母方同士の親戚で近所という事もあり、とても仲が良かった。 |