chapter:身代わり~秘めた恋心。 ひとりっ子の悠里にとって、9歳も年の離れた昴の存在は、兄のように身近なものだった。 そんな悠里は、父親、母親と3人暮らしである。 しかし、悠里にとって唯一の家族とも言える両親は、悠里が年齢を重ねていくごとに不仲になっていった。 父親が仕事から帰って来るたび口喧嘩が多くなっていた。 もともと控えめな性格だった悠里はそのこともあって、言いたいことも言えない性格になってしまった。 幼い頃から背が低く、色白で少女のような顔立ちをしており、おかげで男の子からはよく女の子のようだと揶揄(からか)われることが多かった。 それと相まって、悠里が日に日に大人しくなるから、いじめられることが頻繁(ひんぱん)になる。 悠里は同い年の男の子達に揶揄われる度、近所の公園でひとり、泣いていた。 悠里は、自分は孤独で、なんの取り柄もない子供だと思い込む。 そんな時だ。 彼が――昴が寄り添ってくれた。 悠里を知らない大人達は、『泣くな』と言って、弱虫な自分を責めるのに、昴だけは、『泣けばいい』と悠里を包み込んでくれたのだ。 悠里は、そんな昴の前では唯一、自分の気持ちを吐き出すことができ、おかげで、孤独感に苛まれることなく毎日を過ごせていた。 悠里は、いつも自分を包み込む優しさを見せる昴を尊敬し、彼のようになりたいと、いつしか憧れを抱くようになっていた。 |