chapter:身代わり~秘めた恋心。 ――刻は移り代わり、薄花桜が咲き、真っ白い粉雪が舞い散る季節へと変化する。 そして昴と離れた悠里は、中学生になった。 母親はパートをしながら家事をこなし、悠里もまた、学校が無い時などは、自主的に家事手伝いをこなす。 時折、胸の奥深くにしまった昴への想いが出てきそうになるものの、なんとかそれを封じて、大切な宝物として胸に秘め、暮らしていた。 そんなある日のことだった。 悠里が中学3年生という、受験が間近に迫った頃――。 今まで健康だと思い込んでいた母親が、あろうことか脳卒中で倒れてしまった。 悠里は母親の看病と、家計をなんとかするため、アルバイトと学業に勤しむことになる。 しかし、その甲斐虚しく、母親は他界してしまった。 悠里ひとりを残して――……。 天涯孤独になった悠里は、途方に暮れた。 生きていくのがやっとの生活で、学校さえも休学してしまおうかと考えたほど、明日さえも見えない切迫した暗闇。 絶望が悠里を襲いはじめた時だった。 ――悠里の前に、細い金色の髪が太陽の光を受けて輝き、象牙色の健康的な肌にすっきりとした顔立ちの、長身の男性が現れた。 彼こそが、悠里が長い間想い続けていた昴だった。 同じ二重の瞼だが、悠里とは違う鋭い瞳をした、けれど穏やかに微笑む昴の瞳が、悲しみを帯びた孤独な悠里を映す。 |