chapter:切ない想い。 小鳥のさえずりで、霧崎 悠里(きりさき ゆうり)は目を覚ました。 半開きになった窓が、まだ寝ぼけ眼の悠里の目に映った。 外から流れてくる秋のひんやりとした冷たい風が、レースのカーテンを揺らし、色素の薄い悠里の頬をそっとなぜる。 昴(すばる)と身体を繋げるようになってからというもの、悠里は彼の部屋で寝起きを繰り返すようになった。 気がつけば、身体を重ねるようになって7ヶ月が過ぎていた。 昴の残り香である、ムスクの香りが悠里の鼻孔をくすぐる。 悠里は、昴を感じて起きるこの時間が好きだった。 (時間……今何時かな?) ふと、隣を見れば、やはりベッドは悠里が占領している。 昴は悠里が目覚めるよりも先に仕事へ行き、悠里はひとりで目を覚ます。 モデルという仕事は華やかなようでいて実は、とても過酷なのだと悠里は朝が来るたび実感する。 昴との夜の情事の後、悠里は朝早くから起きるという事ができにくいことを知り、夕食を多めにつくり、朝食にまわしている。 昴はそのことについて、何ひとつ文句を言わない。 やはり、昴は優しい。 昴は夜の色事以外では、悠里が小さい頃と同じように接してくれる。 高校の問題で判(わか)らない箇所があれば、先生になれるんじゃないかというくらい丁寧に教えてくれる。 だから、悠里は期待をしてしまう。 |