chapter:切ない想い。 もしかすると、昴も自分と同じ気持ちなのではないかと……。 しかし、それは有り得ないことだ。 昴はただ、悠里の保護者としての義務からこうしてくれているだけなのだ。 (それに、昴にはある女優さんとの恋仲が噂されているし――) 昴との噂が流れている女優の詳しい容姿や名前などは悠里は知らない。 知りたくもなかった。 どうせ昴の想っている女性はおそろしく綺麗で華やかなのだろう。 そう思うから、テレビは見るが、ニュースは芸能関係のものが流れるとすぐにチャンネルを変える。 悲しい想いを抱く悠里の胸は、そのことを考えるたびに痛みはじめる。 生まれ出た考えを振り払うため、頭を2、3回振った後、昴と一夜を過ごした証とも言える、気怠い身体を起こし、棚に置いている銀色の目覚まし時計を手にした。 時計の針は8時前を示している。 その途端、悠里の全身からは血の気が引いていく……。 「たいへん、遅刻する!!」 悠里は慌ててベッドから飛び起きた。 悠里が通う、九条(くじょう)高校は、昴の家からだと徒歩で30分はかかる。 どう足掻(あが)いても遅刻は決定なのだが、昴が学費を支払ってくれていることを考えれば、できれば無遅刻無欠席で高校生活を終えたいと思っていた。 昴はただでさえ役立たずな自分の面倒を見てくれている。 これ以上、彼に迷惑をかけてはいけない。 |