chapter:身代わり~秘めた恋心。 いくら自分から口にした言葉とはいえ、昴を好きなことには変わりない悠里は、苦しみ、昴への想いから思考を遠ざけようと俯く。 それゆえに、昴の瞳が悠里を責めるように見ていることを、悠里は知らない。 そして悠里は、さらに言葉を告げる。 「ぼく、ひとりでも大丈夫だよ?」 ――本当はひとりではなく、昴と共にいたい。 できることなら、ずっと昴の隣にいたい。 悠里の願いは、それだ。 だが、それは叶わないことだし、昴には今でなくても、何(いず)れは好きな女性(ひと)が現れることも知っていた。 それは惚れた弱みだけではない。 完璧な容姿だけでなく、人間性にも優れた、『昴』という人物が物語っていた。 もう自分の面倒も見なくてもいい。 悠里はそう言おうと、ここへきて昴の表情を大きな茶色い目に映した。 その時だ。 何故か昴の表情が、歪んで見えた気がした。 (――えっ? すばる?) 「……榑葉がいいのか?」 「え?」 彼の言葉はあまりにも早口で、薄い唇から飛び出た言葉が、判らなかった。 「す…………んっ!!」 もう一度、昴が何を言ったのか尋ねようと、彼との距離を近づけた時だ。 悠里は不意に呼吸ができなくなった。 理由は、彼の薄い唇が、悠里の口を塞いだからだ。 (――昴?) 悠里は何故、昴が自分などに口づけしているのか意味が判らず、何度も瞬きをして目の前の現状を把握しようと試みる。 |