好きと言えない。
第二話





chapter:身代わり~秘めた恋心。





 いくら自分から口にした言葉とはいえ、昴を好きなことには変わりない悠里は、苦しみ、昴への想いから思考を遠ざけようと俯く。

 それゆえに、昴の瞳が悠里を責めるように見ていることを、悠里は知らない。

 そして悠里は、さらに言葉を告げる。

「ぼく、ひとりでも大丈夫だよ?」


――本当はひとりではなく、昴と共にいたい。

 できることなら、ずっと昴の隣にいたい。

 悠里の願いは、それだ。

 だが、それは叶わないことだし、昴には今でなくても、何(いず)れは好きな女性(ひと)が現れることも知っていた。

 それは惚れた弱みだけではない。

 完璧な容姿だけでなく、人間性にも優れた、『昴』という人物が物語っていた。


 もう自分の面倒も見なくてもいい。

 悠里はそう言おうと、ここへきて昴の表情を大きな茶色い目に映した。


 その時だ。

 何故か昴の表情が、歪んで見えた気がした。


(――えっ? すばる?)



「……榑葉がいいのか?」

「え?」

 彼の言葉はあまりにも早口で、薄い唇から飛び出た言葉が、判らなかった。

「す…………んっ!!」

 もう一度、昴が何を言ったのか尋ねようと、彼との距離を近づけた時だ。

 悠里は不意に呼吸ができなくなった。

 理由は、彼の薄い唇が、悠里の口を塞いだからだ。


(――昴?)

 悠里は何故、昴が自分などに口づけしているのか意味が判らず、何度も瞬きをして目の前の現状を把握しようと試みる。


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