好きと言えない。
第三話





chapter:切ない想い。





 悠里は、遅刻という失態を犯そうとしている現状に苛立ち、ベッドから勢いよく立ち上がる。


 その瞬間だった。

 悠里の視界は突然揺れ、世界が変化する。

 身体を支えきれなくなった細い脚は絡まり、カーペットの上に勢いよく倒れる重い音が、静かな朝を迎えた部屋に響き渡った。


 悠里のしなやかな身体は昴との情事でむき出しになっているため、倒れた衝撃はすべて自分の身体が受け取ってしまう。

 激痛が身体を駆け巡った。

「いたた……」


 悠里は、カーペットの上に倒れ込んだ身体を細い2本の腕で支え、起き上がる。

 そこではじめて、自分の身体がいつも以上にずっと、鉛のように重たいと感じた。

(風邪……かな……)


 だからといって、学校を休むことなど考えられない。



 悠里は、今度は慎重に、学校へ行く準備をはじめた。

 おかげでいつもより、学校へ行く支度さえも遅くなる。

 白いカッターシャツの襟元に緑色のネクタイをしめ、紺色のズボンをはき、ズボンと同じ色のブレザーに袖を通す。

 食事は、遅刻するからという理由で何も口にすることなく家を出た。

 朝食を抜いたことを悠里が後悔するのは、もう少し後になってからだ。



 軋む身体に鞭を打ち、走り急ぐ悠里はやっとのことで正門をくぐった。


 目の前には体格のいい、年齢は40歳前後の強面な男性の先生がすでに立っていて、悠里の生徒手帳に、『遅刻』と、記入する。


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