chapter:切ない想い。 光に心配をかけさせまいと、悠里は、にっこり微笑み、窓際から2列目の最後尾の席に着く。 「そう? ムリはしちゃだめだよ?」 「うん、気をつけるよ」 光は悠里の言葉を信じることはできなかったが、かといって自分の忠告を素直に受け取るような性格でもないことを知っていたので、それ以上突っ込まないことにした。 悠里は見かけによらず頑固な一面を持っていた。 その頑固さは自我の強さをあらわす。 はじめ、いつも俯いている悠里を見た目だけで軟弱だと判断し、話しかけてみたものの、存外自分の気持ちを率直に表現する術も持っていることを知り、好感を得た。 だからこそ、光は悠里のことを親友だと思い、こうやって接しているのだ。 しかし、悠里は頑固なだけではなく、寛容な部分もある。 現にクラスの連中も悠里を中心にしてクラス行事の相談をすることが多かった。 悠里はけっして出された回答に否定を唱えない。 自分の意見を受け入れてくれる寛容な部分に、皆、惹かれていった。 その一方で、悠里は自分のことになると頑固になる。 そういう長所や短所を知らないのは本人ばかりだ。 席に着いた悠里は、自分の傍から去る光に、『なぜ、そこまでして授業を受たいのか』と訊(たず)ねてこなかったことに、深く感謝した。 |