chapter:切ない想い。 それは、いくら親友とはいえ、光には昴のことはすべて伏せ、両親を失い、親戚の家に居候していることしか打ち明けてはいなかったからだ。 その理由は、自分の世話をしてくれている人がモデルだと知られれば、昴に迷惑がかかると思ったからだった。 しかも、その人に毎夜身体を繋げて過ごしているなどと誰が口になどできようか。 ただでさえ、同性に想いを寄せていることは世間では認められていないのだ。 それで男と――しかも、現在人気沸騰中のモデル、間宮 昴と毎夜身体を繋げているということが知られれば、恐ろしい事態になりかねない。 光は言いふらしはしないと思う。 だが、ここは学校で、どこで聞き耳を立てられているのかも判らない。 昴のことは誰にも口外しない。 それは、担任の先生にも言えることで、近々ある、三者懇談も、昴には言わないつもりでいた。 これまで、悠里は常に先生に、保護者は仕事があって来られそうにないと、そう伝えてきた。 悠里の思考があらゆるところで霧散している中、耳の端で1限目を知らせるチャイムが聞こえた。 教室のドアが大きく開くと、大股で歩く足音が前の黒板で止まる。 室内に響き渡っていた同級生の笑い声なども消え、教室の中は静寂と化す。 するとすぐに、学級委員の、『起立』という声が聞こえた。 生徒達は全員椅子を引き、緊張感あふれる空間が室内に充満する。 |