chapter:甘美な身体。 そして、次の瞬間、悠里は現状を把握した。 悠里は教室で、1限目の授業の最中に倒れてしまったという事実を思い出した。 そのことを理解した悠里は、疲労している身体だということも忘れ、固く閉ざした瞼を開けた。 目の前に広がるのは、真っ白な天井。 少し視線をずらせば、薬が綺麗に陳列されている高い棚が見える。 ここは間違いなく保健室だった。 どうやら授業中に倒れてしまった悠里を、誰かが此処まで運んでくれたらしい。 悠里はそのことを理解すると、勢いよくベッドから立ち上がった。 目の前には、携帯電話を手にしている白衣の女性。 学校内の養護を任された、養護教諭(ようごきょうゆ)がいる。 では、先ほど、彼女が話していた相手はいったい誰だろう。 そう考える悠里の頭の中では、警告音が鳴っていた。 だって周りを見渡してもベッドがみっつ並んでいる広い室内にいるのは自分しかいないのである。 『保健室におりますので』 電話越しで話していた相手……。 そして、彼女の右手には、今日大失態を犯してしまった、『遅刻』と刻まれた自分の生徒手帳がある。 その生徒手帳には、通学途中などで事故に遭った時、身元が判るようにと、ただ唯一記入している、誰にも言ってはいけない秘密とも言える――昴の携帯電話の連絡先が記入してある。 (まさか!!) すべてを理解してしまった悠里の背筋が、凍りつく。 |