好きと言えない。
第四話





chapter:甘美な身体。





 しかし、それも叶わないことだ。

 自分の身体は時間が過ぎていくごとに怠さを増している。

 一歩、足を踏み込むごとに息があがり、幾度となく硬い床に倒れ込んでしまいそうになる。


 彼女が言うとおり、熱があるのだろう。

 身体が発火するかのように熱い。

 このまま、発火して灰となって消えるのも悪くはないかと、現実には有り得ない事さえも頭に過ってしまう。

 それだけ、今の悠里は窮地に立たされていた。



「待ちなさい!!」


 彼女は、そんな悠里を制した。

 再び伸びてきた彼女の細い腕が悠里の両肩を掴んだ。

 いくら華奢な身体つきをしている悠里であっても、男には変わりない。

 普段ならば、女性の腕はすぐに振り払える。

 しかし、悠里は今、熱がある。

 彼女の細い腕を振り払うことさえも一苦労だ。




 足元がおぼつかない男子生徒は、どうやって、ひとりで帰宅するの言うのだろうか。

 彼女は学校の教員として、彼を危険に合わせることはできないと判断した。

 案の定、両肩を後ろから掴まれた彼の身体は倒れ込むようにして、彼女の腕にすっぽりと埋まってしまった。


 彼女の腕の中に力なく収まった彼の頬は、林檎のように赤く染まっている。

 身体も、少し触れただけでも熱があると判るほど、とても熱かった。

 しかも、ふっくらとした少女のような赤い小さな唇からは、苦しげな浅い呼吸を繰り返している。


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