chapter:想い、溢れて伝う涙。 これ以上、昴には、迷惑をかけられない。 吐き気に見舞われながらも、それでもひとりで家に帰ろうと思った。 「悠里、待ちなさい」 いつの間にか、車の反対側のドアから出た昴は、悠里の細い肩を掴み、ひとりで車から降りる悠里を止めた。 どうやら昴は家に着くまで悠里を支えてくれるらしい。 しかし、悠里はもうたくさんだと思った。 役立たずでのろまだと、昴に思われたくはなかった。 だから悠里は昴の言葉を聞かず、昴の腕を振り払い、そのまま、車から出る。 すると、案の定とも言うべきか、今朝方と同じように脚が絡まり、悠里の華奢な身体が傾いた。 ――また、地面に激突する。 そう思った悠里は、次にやって来る衝撃に堪えるため、唇を引き結びグッと噛みしめた。 固く目を閉ざす。 しかし、なぜだろう。 いつまでたっても激痛は、襲ってはこなかった。 悠里は、固く閉ざした目を、恐る恐る開く。 見えたのは、力強い意志を示した鋭い顎だ。 視線をさらに上げると、自分を非難するような虎の瞳をした、凛々しい昴の顔があった。 昴は、悠里が倒れないよう、支えてくれていた。 「だから言っただろう? 少し待っていろと」 『そんなことも守れないのか』 昴はそう言うように、悠里を咎(とが)める。 「ご、めん、なさい……」 また、昴に余計な心配をかけてしまったのだと思えば、胸がジクジクと痛み出す。 |