好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。





 これ以上、昴には、迷惑をかけられない。


 吐き気に見舞われながらも、それでもひとりで家に帰ろうと思った。


「悠里、待ちなさい」


 いつの間にか、車の反対側のドアから出た昴は、悠里の細い肩を掴み、ひとりで車から降りる悠里を止めた。

 どうやら昴は家に着くまで悠里を支えてくれるらしい。

 しかし、悠里はもうたくさんだと思った。

 役立たずでのろまだと、昴に思われたくはなかった。

 だから悠里は昴の言葉を聞かず、昴の腕を振り払い、そのまま、車から出る。


 すると、案の定とも言うべきか、今朝方と同じように脚が絡まり、悠里の華奢な身体が傾いた。


――また、地面に激突する。

 そう思った悠里は、次にやって来る衝撃に堪えるため、唇を引き結びグッと噛みしめた。

 固く目を閉ざす。

 しかし、なぜだろう。

 いつまでたっても激痛は、襲ってはこなかった。

 悠里は、固く閉ざした目を、恐る恐る開く。

 見えたのは、力強い意志を示した鋭い顎だ。

 視線をさらに上げると、自分を非難するような虎の瞳をした、凛々しい昴の顔があった。

 昴は、悠里が倒れないよう、支えてくれていた。

「だから言っただろう? 少し待っていろと」


『そんなことも守れないのか』

 昴はそう言うように、悠里を咎(とが)める。


「ご、めん、なさい……」


 また、昴に余計な心配をかけてしまったのだと思えば、胸がジクジクと痛み出す。


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