chapter:想い、溢れて伝う涙。 自分の体調なんて気にしていられない。 風邪なんてどうだっていい。 なんとしてでも、昴に嫌われることだけは阻止しなければ。 だって、これくらいしか昴を繋ぎとめる術がない。 これで、昴は機嫌を直してくれるだろうか。 多少の不安はあったが、今の自分にはそれしかない。 悠里は、身に着けていた制服を脱いでいく……。 どうか昴が気に入ってくれるようにと、願いながら――……。 悠里は、ノブを回す機械的な音と、静かにドアが開くのを視界の隅に映した。 ドアが開く音で、恥ずかしさのあまり、この部屋から飛び出したくなる。 それを抑えるため、膝の上に置いた両の手を握りしめた。 「悠里、これで少しは楽になるだろう……」 氷枕を片手に抱え、昴が部屋に戻った。 寝室のドアを開けるなり、昴が真っ先に見たものは、陶器のような滑らかな肌に、夜毎、彼をベッドに組み敷く昴がつけた、無数に散らばった赤い痣。 一糸もまとわない悠里の姿だった。 切れ長の目が、少しずつ大きく開き、唾を飲む喉仏が上下にゆっくりと動く。 「悠里!?」 困惑したような、驚きにも似た彼の声が、羞恥を抱く悠里の耳に響いた。 悠里は、昴と幾度も重ね合ったベッドから腰を上げ、立ち尽くしている昴へと歩み寄る。 |