好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。





 自分の体調なんて気にしていられない。 

 風邪なんてどうだっていい。

 なんとしてでも、昴に嫌われることだけは阻止しなければ。


 だって、これくらいしか昴を繋ぎとめる術がない。


 これで、昴は機嫌を直してくれるだろうか。
 
 多少の不安はあったが、今の自分にはそれしかない。


 悠里は、身に着けていた制服を脱いでいく……。

 どうか昴が気に入ってくれるようにと、願いながら――……。


 悠里は、ノブを回す機械的な音と、静かにドアが開くのを視界の隅に映した。

 ドアが開く音で、恥ずかしさのあまり、この部屋から飛び出したくなる。


 それを抑えるため、膝の上に置いた両の手を握りしめた。



「悠里、これで少しは楽になるだろう……」


 氷枕を片手に抱え、昴が部屋に戻った。

 寝室のドアを開けるなり、昴が真っ先に見たものは、陶器のような滑らかな肌に、夜毎、彼をベッドに組み敷く昴がつけた、無数に散らばった赤い痣。

 一糸もまとわない悠里の姿だった。


 切れ長の目が、少しずつ大きく開き、唾を飲む喉仏が上下にゆっくりと動く。


「悠里!?」

 困惑したような、驚きにも似た彼の声が、羞恥を抱く悠里の耳に響いた。

 悠里は、昴と幾度も重ね合ったベッドから腰を上げ、立ち尽くしている昴へと歩み寄る。


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