好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。





 何故なら、悠里は昴とのこの行為が、彼に抱かれるよりもずっと好きだからだ。


 だから悠里は、そっと瞼を開けた。

 目が半分ほど開くと、やはり、目の前には彼の顔があった。



(昴とキス……してる…………)


 ねっとりとした何かは昴の舌で、それは悠里の口内を我が物顔で蹂躙していた。


「ん……んっ」

 昴の舌が悠里の舌を絡め、吸う。

 その度に、淫猥な水音と、彼から放たれるくぐもった声が聞こえてくる。

 悠里をさらに追い込む。

 ああ、だけど、こんなことをしてはいけない。

 自分は風邪をひいている。

 昴に風邪をうつしてはいけない。

 これ以上、迷惑はかけられない。



 悠里は昴の衣服にしがみついていた両腕を解き、突き放すようにして身を捩る。


 しかし、悠里の力さえもなんともないようで、昴は微動だにしない。

 その代わりに、悠里の身体が下に傾く。

 その先にあるのは、カーペットだ。


(……それでもいい。大好きな人に風邪をうつすくらいなら……自分がベッドから落ちればいい――)


 そうしてそのまま目を覚まさず、昴の前からいなくなることができれば、どれほどいいだろう。



 悠里は、昴から身体を引き抜き、やがて背中からやって来るだろう激痛に備えた。

 しかし、悠里の身体は激痛はおろか、ベッドから落ちる形跡もなかった。


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