chapter:想い、溢れて伝う涙。 何故なら、悠里は昴とのこの行為が、彼に抱かれるよりもずっと好きだからだ。 だから悠里は、そっと瞼を開けた。 目が半分ほど開くと、やはり、目の前には彼の顔があった。 (昴とキス……してる…………) ねっとりとした何かは昴の舌で、それは悠里の口内を我が物顔で蹂躙していた。 「ん……んっ」 昴の舌が悠里の舌を絡め、吸う。 その度に、淫猥な水音と、彼から放たれるくぐもった声が聞こえてくる。 悠里をさらに追い込む。 ああ、だけど、こんなことをしてはいけない。 自分は風邪をひいている。 昴に風邪をうつしてはいけない。 これ以上、迷惑はかけられない。 悠里は昴の衣服にしがみついていた両腕を解き、突き放すようにして身を捩る。 しかし、悠里の力さえもなんともないようで、昴は微動だにしない。 その代わりに、悠里の身体が下に傾く。 その先にあるのは、カーペットだ。 (……それでもいい。大好きな人に風邪をうつすくらいなら……自分がベッドから落ちればいい――) そうしてそのまま目を覚まさず、昴の前からいなくなることができれば、どれほどいいだろう。 悠里は、昴から身体を引き抜き、やがて背中からやって来るだろう激痛に備えた。 しかし、悠里の身体は激痛はおろか、ベッドから落ちる形跡もなかった。 |