好きと言えない。
第五話





chapter:想い、溢れて伝う涙。




 
 大きな目に溢れていた涙は目尻を伝い、頬へと流れはじめる。

 口では言い表せないほどの罪悪感が悠里の小さな胸を襲った。


 それなのに、昴は悠里の発した言葉を軽く受け流した。



「なんだ、それだけ?」と――……。



「えっ?」


(それだけ? 違う。それだけじゃない。だって、ぼくは昴に迷惑ばかりをかけているんだ)

 だからそれだけではないと、悠里は首を振った。


 すると、昴は悠里の頭を自分の胸に引き寄せる。


「悠里、俺は別に君を足手まといだとは思っていないよ」

「……っつ!!」

 その言葉が、悠里の視界を奪う。


「……っひ」

 苺のようなかわいらしい唇から、嗚咽が吐き出される。


「悠里、泣かなくてもいい。俺は悠里のことを大切に思っているよ」

 そう言って、彼は熱のある悠里の身体を、いっそう自分の胸に引き寄せた。



「すば……る……」


(――違う。昴はぼくのことをただの弟としか思っていない。夜になれば、ただの性欲処理だ。勘違いしてはいけない――)


 そう自分に言い聞かせても、悠里の心は期待せずにはいられなかった。

 だから悠里は、細い腕を昴の広い背中に回した。



 離さないで、と、祈りながら――……。


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