chapter:この腕に抱く秘密。 先ほど目にした光景が――彼女のふくよかな胸に顔を埋める悠里の姿が頭から離れない。 悠里は、日を増すごとに、とても美しく、そして人を惑わすようになっていた。 そうなるように仕向けたのは、他でもない昴自身だ。 それは過去。 悠里の両親は昔から不仲だったため、居場所を求めてよく昴のところに遊びに来ていた。 昴にとって、兄のように慕ってくる悠里が可愛くて仕方がなかった。 昴も悠里のことを実の弟のように思い、共に同じ時を過ごしていた。 その想いが変化したのはいつの頃だっただろうか。 何時もと同じように、悠里が昴の隣で昼寝をしていた時だ。 可愛らしい唇が目に入り、気がつけば、自らの唇で触れていた。 思ってもみない自分の行動で、昴は戸惑いを隠せなかった。 それは昴にとって、悠里が弟という枠組みに填った存在ではないことを知った瞬間だった。 いつの頃からなのか、昴自身も気がつかないうちに、悠里を恋愛対象として見ていた。 それはもしかすると、初めからそういう対象で見ていたのかもしれない。 気付かされた恋心に拍車を掛けるようにして、不仲だった悠里の両親が離婚を決意したという事実――。 悠里は必然的に、昴の元から離れるように引っ越していった。 やっと理解した恋心は淡くも消え去り、悠里とはもう会えないのかと思えば、昴の胸にぽっかりと穴が空いたような感覚に陥った。 |