好きと言えない。
第六話





chapter:この腕に抱く秘密。





 今になって、そのことが悔やまれる。

 だが、昴は限界だった。

 誰にでも愛想を振りまく悠里を自分だけのものにしたいという独占欲が彼を襲いはじめていった。

 悠里の口から他人の名前が出るたび、昴は苛立ちを隠せなかったし、その苛立ちを理解すれば、自分はこれほどまでに短気なのかと自己嫌悪に陥ってしまう。

 気がつけば、華奢な身体をベッドの上で組み敷き、身体をひらかせ、悠里を奪っていた。


 真っ白いシーツの上に鮮血があった時には、自分を責めた。

 しかし、悠里を奪えたことが嬉しいと思う残酷な自分もいたのだ。

 それからだ。

 昴は悠里と寝室を共にし、毎夜、嫌というほど身体を繋げ、快楽を覚えさせた。



(その結果がこれだ)



 年頃にない色香を持ち、同性からも異性からも特殊な目を向けられる悠里――。

 それをつくり出したのは、他でもない昴自身だ。

 昴が悠里を抱くごとに、何を考えているのか判らなくなり、俯(うつむ)く回数も増えていく。



 もう、自分を必要としていない。

 まるで、悠里からそう告げられているようで、心苦しい。




 タクシーの窓から、流れる景色を見つめている悠里の、どこか陰を帯びた切ない表情。

 悠里の姿を見た昴の胸は、痛んだ。


 自嘲気味(じちょうぎみ)に、笑ってしまう。

 何時からだろう。

 悠里の顔から笑顔が消えたのは……。


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