chapter:想い、深く。 ……たった、それだけのこと。 けれどそれ以上の効果を、昴は間違いなく悠里にもたらしていた。 悲しみに染まった心が、次第に熱を持ち、あたたかくなる。 「これ、食べられるか? まあ、無理してでも食べてもらうけど」 昴はそう言うと、悠里から身体を離し、横になっているほっそりとした背中に腕を差し込んだ。 悠里をベッドから起き上がらせると次に、昴は手慣れた手つきで近くにあった枕を背中にあてがった。 戸惑いを隠せない悠里の前に、ナイトテーブルに乗せていた小皿とレンゲを差し出される。 「あ、あの……」 いまだ放心状態の悠里を、昴は首を傾げて、続きの言葉を待つ。 あまり自分の気持ちを率先だって伝えることのできない悠里は、昴のその仕草がとても嬉しかった。 そして悠里は、やっとのことで自分の想いを口にすることができるのだ。 昴はいつもそうだ。 悠里が何か話したいと思うことを、こうやってジッと待ってくれる。 「あの、昴……お仕事は?」 悠里が訊(たず)ねたのは、昴には一日中、自分の傍にいてほしいと思っていたからだ。 だが、それも叶わないことでもあることは、悠里自身が一番よく知っていた。 昴にとって、一番大切なのは仕事で、悠里ではない。 だから疑問は悲しい言葉になって返ってくる。 けれどそうは思っても、やはり何かを期待してしまう。 (馬鹿だな。訊(き)いたって、結局は苦しくなるだけなのに……) |