chapter:想い、深く。 「ちがう。嫌わない」 いったいどうすれば昴のことを嫌いになれるのだろうか。 悠里にはそれがまったく判(わか)らない。 嫌う方法があれば、そうしたいくらいだ。 しかし、昴は何時だって優しくて、何時だって格好いい。 悠里の中で、昴は誰よりも何よりも一番大きな存在なのだ。 「悠里?」 ひたすら首を振り続ける悠里の頭上からは、困っているような昴の声が聞こえる。 自分が困らせているのだと思えば、とても心苦しい。 けれど、昴に何を言えばいいのか判らない。 常に悠里の胸の内にある、『好き』という感情を言葉に乗せてしまえば、余計に昴を困らせるだけ――。 悠里は胸の内にある想いを、けっして他言しないよう、小さな唇を引き結ぶ。 もちろん、昴の表情など見られるはずもなく、目線はまた、毛布の上に戻った。 しかし、悠里の気持ちはそう長くは隠せない。 だから悠里は、自分の想いを話さない代わりに、昴の袖を、ぎゅっと握りしめた。 その瞬間、微笑むような柔らかい雰囲気が昴から伝わってきた。 恐る恐る見上げれば、薄い唇は口元は弧を描き、細い目をいっそう細くして、悠里を見下ろしていた。 「遠慮はしなくていい。俺は悠里の保護者だからな」 穏やかに微笑む昴が言う。 ――昴はいったい、何時まで自分の保護者をしてくれるのだろう。 彼女さんと結婚するまで? 結婚は何時するの? |