chapter:想い、深く。 「ん……」 布団に包まった悠里(ゆうり)は、深い眠りからゆっくりと目を覚ました。 まだ熱があるのか、身体は怠いものの、けれど、何故か、今までにないほど充実した穏やかな気分だった。 そっと目を開ければ、そこは、真っ青な空から顔を出している太陽の白い光が部屋を照らし、輝く空間を創り出している。 しかし、穏やかな優しい空間とは裏腹に、頭が覚醒していくと、悠里の心は黒く塗りつぶされていく。 隣を見ても、やはりとも言うべきか、何もない。 昨日、悠里を寝かしつけるために添い寝までしてくれていた昴(すばる)の姿は何処にもなかった。 ふと、頭上にある置時計を見る。 針は、7時30分を指していた。 (やっぱり、お仕事行っちゃったよね……) 所詮(しょせん)、昴にとって、悠里は邪魔者だ。 だから、こうなることは当然なんだ。 けっして、昴を望んではいけない。 昴には昴の事情があるし、彼女という本命だっているのだから……。 (添い寝してくれただけでもありがたいと思わなきゃ) そう思っても、すっかり縮こまってしまった小さな胸は、楽になる筈もなかった。大きな瞳からは涙が溢れてくる。 せっかくの清々しい朝も、悲しみの涙で滲んでしまう。 「す……ばる……っふ、ふぇ…………」 悠里は悲しみに染まった心をなんとか落ち着かせようと、両腕で自分の身体を抱きしめた。 |