好きと言えない。
第十話





chapter:想い、打ち明けて。







 「悠里(ゆうり)……」

 薄闇色に染まった世界。

 意識下から、自分を呼ぶ声が聞こえた。


 昴(すばる)だ。

 悠里は、自分を呼ぶその人が誰なのかをすぐに理解した。

「悠里……また、風邪をぶり返すぞ?」

 悠里の耳に、そっと囁かれる優しい声音。



 それでもいい。

 その方がいい。

 風邪をひけば――熱を出せば、昴はまた、自分の隣にいてくれるでしょう?


 悠里は、いまだ蹲(うずくま)ったまま、心の中で彼に問う。

 一向に閉ざした目を開けない悠里。

 身体が突然宙を浮いた。


 悠里は微かに瞼を開き、確認する。

 どうやら昴は、目を覚まさない悠里に痺れを切らしたのか、悠里の身体を横抱きにすると、何処かへと向かって歩き出した。

 向かった先は、今では勉強の時にしか使用していない、自分の部屋だ。

 やはり、昴は自分を抱く気はないらしい。

 そう思うと、悠里の胸は、張り裂けそうに痛み出す。


- 79 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom