chapter:恋着。 悠里が目と鼻の先にいると思えば、自分の意志とは関係なく、足は勝手に速度を増す。 昴は苦笑を漏らし、悠里がいる部屋へと向かう。 玄関を開けると、暗闇の廊下にわたって、ダイニングキッチンから光が漏れていた。 (悠里? まだ起きているのか?) 時計の針は、深夜2時を指していた。 悠里は今日も学校がある。 ましてや、彼は3日前に身体を壊し、やっと本調子に戻りつつある身だ。 今、夜遅くまで起きていては、また風邪をぶり返す恐れがある。 なんたって、悠里は昔から身体が丈夫と言えるほどではなかったから――。 昴は深夜遅くまで家に帰らなかったことを棚に上げ、こんな時間まで起きている悠里を寝かせようと、明るい光が差し込むキッチンまで進む。 昴が進む先に立ちはだかるのは、ただの木でできた一枚のドア。 それを開ければ、すぐに悠里が見えるはずだ。 けれど昴は、まるで今から天高くそびえ立つ塔の上から身を投げるような気持ちになった。 気持ちを落ち着かせるため、一度目を閉ざし、自分を阻むドアを開ける。 キッチンを見た瞬間、昴は息をのんだ。 それというのも、悠里が冷え切った床の上で蹲(うずくま)っていたからだ。 「悠里……?」 昴は、蹲っている悠里の肩にそっと触れる。 もしかすると、体調を崩したのかも知れない。 昴の心が不安に満ちる。 |