chapter:恋着。 また熱が出たのかと思って、額に手を添えれば、可愛らしい鼻にかかった声が耳をかすめた。 どうやら熱はないらしい。 触れた額はひんやり冷たかった。 ひと安心した昴だが、けれど油断はできない。 「悠里、こんな寒い処にいてはまた体調を崩すぞ?」 そっと耳元で告げてみる。 しかし、悠里は眠いのだろうか、一向に閉ざした瞼を開ける気配がない。 悠里の身体に触れた、昴の手は冷たくなる一方だ。 いくらか酒を流し込んで暖かくなった昴の身体が、悠里に触れた箇所から徐々に体温が奪われていく――……。 それは、昴が帰宅するまで、悠里がずっとキッチンにいたことを物語っていた。 蹲る悠里の隣にあるテーブルの上――そこには、焼き魚やら白米が入れられた器がふたり分、乗っている。 悠里は、自分が帰宅するのを待っていたのだ。 夜遅くまで、夕飯も口にせず――――。 (悠里……君は……) 昴の中で、切なくも愛おしいという気持ちが、一気に流れ込んできた。 ――それは昔。 悠里の両親は喧嘩が絶えず、そのおかげで引っ込み思案になってしまった。 すっかり臆病になった悠里を、クラスの連中が揶揄(からか)い、泣く日もあった。 昴は、その悠里を慰め、ずっと寄り添っていた。 彼を守ろうと決めた昴。 だが、結局は、昴も悠里をいじめていた奴らと変わらない。 |