chapter:DARK SIDE-side:神楽 ――見つけた。 暗闇の中、俺は口角を上げて、にやりと笑った。 とうとう見つけ出した。 ここまで来るのに一ヶ月という月日がかかった。 俺がここまで時間を費やしたのには、理由がある。 あまりにも強大な力を持っている古都(こと)は、己の力をコントロールする術がない。 そのため、力は極限まで使わないよう、彼の両親から教えられていた。 だから古都は、妖力を身体から漏らすことがない。 人型になれば生身の人間と同じように無力だし、妖狐の姿となっても、尻尾が九つある他は、人間の世界に住む狐と何ら変わりはない。 しかも、俺が古都を傷つけ、逃げられないよう体力を減らした。 よって、古都は狐になり、人型になる可能性はゼロに近い。 見つけにくいにもほどがあるのが現状だった。 ――あの時、高揚感に浸らず、すぐに古都を抱いておけば良かった。 古都と快楽を楽しむのは、その後でもよかったんだ。 すぐにでも古都を懐柔(かいじゅう)しようとしたツケがまわったんだ。 おかげで気苦労が絶えない。 こんな腐った人間どもの世界に、この高貴な俺が住むことが腹立たしい。 そんな俺だが、以前、ほんの一瞬だが、古都の力を一瞬感じたことはあった。 居場所を突き止めようと、妖力を辿ったものの、だが、それはすぐに消えた。 おかげで、大まかな古都の居場所は判明しても、細かな住居までは把握できなかった。 ――だが、その苦労も終わりを告げる。 どうやら古都は発情期を迎えたようだ。 それは、成人した証拠でもある。 発情期を迎えた妖狐は、知らず知らずの間に自ら匂いを放ち、伴侶たるその者にしか分からない匂いで、惑的する。 そうやって、成人を迎えた妖狐は、自分に相応しい伴侶を見つけるのだ。 この甘い匂いは妖力だ。 この匂いが古都なのだ。 ……この香り。 なんと甘美なものだろう。 蜂蜜のような、甘く、そして狂おしい匂いだ。 ――ああ、古都……。 早くお前を抱きたい。 全身に俺のものであるという印をつけ、小さな唇から放たれる喘(あえ)ぎ声を聴きたい。 今行くよ、我が嫁よ――。 |