迷える小狐に愛の手を。
第十三話





chapter:DARK SIDE-side:神楽







――見つけた。

暗闇の中、俺は口角を上げて、にやりと笑った。

とうとう見つけ出した。

ここまで来るのに一ヶ月という月日がかかった。


俺がここまで時間を費やしたのには、理由がある。

あまりにも強大な力を持っている古都(こと)は、己の力をコントロールする術がない。

そのため、力は極限まで使わないよう、彼の両親から教えられていた。


だから古都は、妖力を身体から漏らすことがない。

人型になれば生身の人間と同じように無力だし、妖狐の姿となっても、尻尾が九つある他は、人間の世界に住む狐と何ら変わりはない。

しかも、俺が古都を傷つけ、逃げられないよう体力を減らした。

よって、古都は狐になり、人型になる可能性はゼロに近い。



見つけにくいにもほどがあるのが現状だった。




――あの時、高揚感に浸らず、すぐに古都を抱いておけば良かった。


古都と快楽を楽しむのは、その後でもよかったんだ。

すぐにでも古都を懐柔(かいじゅう)しようとしたツケがまわったんだ。

おかげで気苦労が絶えない。


こんな腐った人間どもの世界に、この高貴な俺が住むことが腹立たしい。


そんな俺だが、以前、ほんの一瞬だが、古都の力を一瞬感じたことはあった。


居場所を突き止めようと、妖力を辿ったものの、だが、それはすぐに消えた。


おかげで、大まかな古都の居場所は判明しても、細かな住居までは把握できなかった。



――だが、その苦労も終わりを告げる。


どうやら古都は発情期を迎えたようだ。

それは、成人した証拠でもある。

発情期を迎えた妖狐は、知らず知らずの間に自ら匂いを放ち、伴侶たるその者にしか分からない匂いで、惑的する。


そうやって、成人を迎えた妖狐は、自分に相応しい伴侶を見つけるのだ。

この甘い匂いは妖力だ。

この匂いが古都なのだ。


……この香り。

なんと甘美なものだろう。

蜂蜜のような、甘く、そして狂おしい匂いだ。



――ああ、古都……。

早くお前を抱きたい。

全身に俺のものであるという印をつけ、小さな唇から放たれる喘(あえ)ぎ声を聴きたい。


今行くよ、我が嫁よ――。





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