迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ







「……ん」

明るい外の光が、オレの瞼(まぶた)を覆う。

あまりにも眩しすぎて目を開ければ、目の前は案の定、お日さまの光が部屋中を照らしていた。

鳥のさえずりは聞こえない。

それは、いつもより日が高い所為(せい)だ。

オレが、「う〜ん」と唸りながら手を上に動かせば、障害物ひとつ当たることなく、伸び伸びと動かせた。

それは、本来なら隣で一緒に寝ているはずの幸(ゆき)がいないということを意味する。

幸はまた、オレを置いて部屋を出て行ったんだ。


……ズキン。


胸が痛む。

なんでだろう?

なんで、幸が隣にいなきゃ、胸が苦しくなるんだろう。

避けられるまで嫌われてるって思うと胸がズキズキするし、気分は一気に落ち込む。

やっぱ幸のこと、花嫁探しで旅立った兄ちゃんたちの代わりみたいに思ってんのかな。



――あ、オレは四人兄弟の末っ子なんだ。

一番上の暁(あかつき)兄ちゃんは、もう百歳を超える立派な妖狐だ。


あ、百歳っていっても、人間の姿になっていると、外見は二十七歳くらいに見えるんだぜ?

威厳たっぷりで、父さんそっくり。

だけど、人間の世界にハマってしまって、『びじねす』とか言うものをやってる。

意外と火遊びが好きなとこは、父さんとは似てないけどな。



二番目の紅(くれない)兄ちゃんは、暁兄ちゃんよりも十歳離れていて、九十歳。





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