chapter:こいごころ ……チクン。 そう思うと、胸がまた痛み出し、瞼が熱くなって、涙が視界を塞(ふさ)いでくる。 たったこれくらいのことで泣くなんて、全然オレらしくない。 なんでこんなに悲しいんだろう。 たかがひとりの人間に避けられているだけじゃないか。 ……その理由はきっと、幼馴染みだった神楽に両親を殺され、大好きだった兄ちゃんたちと離れてしまったからだ。 ひとりぼっちだって、そう思った矢先に幸が側にいてくれた。 だからだな……きっと――。 オレは出てきた涙を腕でグイッと乱暴に拭いて、幸の広い背中を見つめた。 「古都(こと)か。今、食事の用意ができたところだ。食べるといい」 幸は背中を向けたまま、オレに話しかけてきた。 幸はどうやら、オレがココにいるのを知っていたようだ。 なんで? どうしてオレを見ないの? そこまでオレのことが嫌いになった? せっかく閉じ込めた涙は、また溢れはじめる。 だからもう、ガマンの限界だった。 「なぁ、幸。オレ……発情期のこと……ごめん」 ……ぽつり。 背中を向けたままの幸に話しかける。 そうしたら、幸の肩がビクンと上下に揺れた。 幸の反応のおかげで、やっぱりこのことが避けられる原因だったんだと確信した。 「あの……だから……前みたいに、接して欲しいんだ……。幸……あの……」 オレが何を言っても、幸は無言のまま――。 |