迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





だけどオレは、辛抱強く、何も話そうとしない幸をしっかり見据える。


でも……幸に嫌われたのかもしれないと思えば、視界が涙で滲む。

幸の背中でさえもまともに見られなくなるんだ。


「幸、オレっ!!」

言ったその時だった。


コンコンとドアをノックする音が静かな部屋に木霊する。

誰だろうと考えてみるけど、動物病院の受付係として仕事をしている、加奈子(かなこ)しかいないことに気がついた。

「はい、どうぞ」


幸はオレの時とは違う、明るい声で中へ入るよう、うながした。


――なんで?


オレの時は、そんな優しい声、出さないのに……。

なんで彼女だと、そんな優しい声になるの?


そりゃ、発情期で幸に迷惑かけたけどさ……。

でも、なんとかするって、オレ、言ってるじゃんか!!

苛立つオレを余所(よそ)に、扉はひらき、部屋の中へと加奈子が入って来た。


相変わらず加奈子はかわいい。

茶色い大きな目に、ふっくらした桃色のほっぺたと小ぶりな唇。

白い肌に映える桃色のワンピースから覗くほっそりとした足。

幸よりも頭ふたつ分くらい違う身長は、とてもかわいらしい。


「おはよう、加奈子ちゃん」


微笑む幸に、微笑み返す加奈子。

その先で、加奈子と目が合ってしまった。

加奈子はオレを見ると首を傾げ、「あれ?」と声を出す。


「あの、鏡(かがみ)さん? この子は?」





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