迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





すると今度は、オレから視線を外し、幸を瞳に映した。

加奈子の質問で、ここへきてはじめて、幸とオレの目が合った。

やっとオレの顔を見てくれるようになったことが嬉しい反面、このことがなかったら、オレとは顔を見合わせる気がなかったのかと思うと、悲しくなる。


「あ、この子は……」


あ、そうか。

オレ、妖狐の姿でしか加奈子に会ったことなかったんだっけ……。

そのことを思い出し、内心苦笑した。


「俺の従弟(いとこ)なんだ。怪我をしてしまってね、一人暮らしだと何かと不自由だからと一緒に暮らしているんだよ」

「あ、そうなんですか」

幸の作り話を聞いて、疑うことなくうなずく加奈子は純粋だ。

だけどまさか、『オレが狐の古都です』なんて言えないしな。

ここは何も言わず、幸に任せよう。


「わたし、神崎 加奈子(かんざき かなこ)って言います。よろしくね」


そう言って、右手を差し出す加奈子に、今さらだと苦笑しつつ、オレも左手を差し出した。


「よろしく。オレ、古都(こと)」

オレは加奈子から差し出された右手を左手でふんわり握ると、加奈子は目を大きく開けた。

「キミも古都って言うの?」

あ、しまった。

古都って、狐の時と同じ名前だ。

……なんて思っても、もう言ってしまったことは取り消せない。

オレは知らんぷりで突き通すことにした。





- 109 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom