迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





「あ、たしか、ここに居る狐の名前も古都って言うんだよな。偶然だな」

あはは、と乾いた笑いを浮かべるオレに、加奈子も微笑んだ。


「あ、そう言えば、今日は古都ちゃんどうしてますか?」

「あ……。ああ、今は寝ているんだよ」

幸はすかさず返事をした。

「あ、そうなんですか……。起こしちゃマズいですよね。古都ちゃんの顔、しばらく見てないから、会いたいなって思ったんですけど……」


しょんぼりする加奈子の表情は、ほんとに残念そうだ。

できることなら、狐の古都に会わせてやりたい。

だけど、狐の古都はオレで、でもって人型として加奈子の目の前にいる。


……ごめんな。

心の中で加奈子に謝るオレ。


「鏡さん、時間ですよ。準備しなきゃ!!」

「え? あ、ああ……」

「じゃ、またあとでね。古都くん」


加奈子は、オレに挨拶をすると、幸の背中をグイグイ押して一階へと下りて行った。

そんなふたりの姿を見ていると、オレ、蔑(ないがし)ろにされてるみたいだ。



……チクン。


また胸が痛んだのは、気のせいなんかじゃない。


オレはひとり、広いキッチンに取り残され、ふたりが一階に消えてしまってからも、呆然と立ち尽くしていた。


……シン。

静まり返った空間の中で、いたたまれなくなったオレは、あんなに大好きだった朝ごはんのサケに手をつける気にもなれず、三階の部屋に戻った。

パジャマにも着替えず、またベッドに寝転ぶ。





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