迷える小狐に愛の手を。
プロローグ





chapter:プロローグ





手が自由になったのを確認したら、地面に降り積もっている雪を握りしめ、神楽の顔面にぶちかます。

それによって充血させていた金の瞳は冷たい雪を、真正面から受けることになる。



「きっさまあああああ!!」



地面に膝をつく神楽は、両目を手で覆い、怒りをあらわにした。


地獄から放たれるような、怒鳴り声が聞こえた。

正直、ものすごく怖い。

恐怖のあまり、思わず足が竦(すく)みそうになる。

でも、ここで逃げなければ、もっとひどい目に遭うのはわかっていた。


今のうちに逃げないと!!


オレはやってくるだろう激痛から堪えるため、唇を引き結んで雪の上に立った。


ズキンッ!!

「ぐっ……ぁっ!!」

痛みは、オレが想像した以上だった。

激痛に堪えきれず、引き結んだ口から悲鳴が漏れてしまった。


ぱっくりと開いた傷口から、勢いよく血が流れはじめる。

地面にある真っ白な雪が、したたり落ちるオレの血を吸って、赤く染まる。


痛い。
すごく痛い。
できればこれ以上、動きたくない。

――でも、オレは神楽から逃げなければいけない。


オレは、神楽によってあらわになった肌を隠す暇さえもなく、はだけた衣を直さないまま、足にある鋭い痛みを無視して、けっして『走る』という行為ではない足の速さで、迷路のように木の枝が張り巡らされている森の中へと歩きはじめた。





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