迷える小狐に愛の手を。
プロローグ





chapter:プロローグ





父さん……。

母さん……。


ふたりを殺した相手に、オレは自分を捧げるのか?



いやだ。

そんなの、イヤだっ!!


オレは鋭い痛みを感じている両足を動かし、組み敷いている神楽のみぞおちを蹴った。



「っぐ……」

神楽のくぐもった声と一緒に、ギリリと痛むのは、未だ絶えず鮮血を流し続けているオレの足だ――。

だけど、今はそんなことにかまっていられる余裕なんてない。



「貴様!!」

目の前にいる神楽の金の瞳は血走り、大きくひらいている。

ある程度の痛みを感じさせることはできても、やっぱりこんな状態じゃ、神楽を痛めつけるまでにはいかないようだ。

――正直、すごく怖い。


両足に傷を抱えたオレが、強力な妖力をもった父さんを殺した神楽から無事に逃げ切れるとは思えない。


だけど、でも、今は逃げたい。


こんな奴に、オレの何もかもを奪われたくない。


オレはもう一度、傷つきすぎている右足を跳ね上げ、怒りをあらわにしている神楽の腹を蹴った。

だけど神楽は、同じ攻撃を二度も受けるほど愚かじゃない。

オレから身体を離し、繰り出した攻撃を避けた。


だけど、そのおかげで生まれる空間を、オレは見逃さなかった。


オレを押さえる神楽の手がゆるんだ一瞬の隙を突き、力いっぱい分厚い胸板を押し上げる。



神楽の下にある、自分の身体をひっこ抜いた。





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