chapter:プロローグ 歩けば歩くほど、オレの両足から流れ出る血は、まっ白な雪の中に跡を残す。 おかげでオレがどこに向かって逃げているのかを、神楽に知らせてしまう。 「古都!!」 オレを呼ぶ残忍な声が、少しずつ近づいてくる。 オレは、追いかけてくる神楽から逃れるため、できるだけ身を低くして、雪の中を這(は)うように進む。 だけど、あまりにも血を流しすぎたオレの意識は、そう長くは続かなかった。 感覚が消え、目が霞む。 真っ白の世界は、やがて闇へと変化していく……。 ――そんな中だった。 「誰だ? 誰かそこにいるのか?」 疲れた身体に染み渡るような、優しい声がどこからか聞こえた。 同時に、オレの身体がふんわりと浮いたような、そんな気がした……。 |