迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





一階の動物病院にいる、人々が話す声が耳に届く。

妖狐だった時は、ひとりで寝ていたいと思っていたのに、今はみんなといたいと思っている。


ヘンなの。

寂しいなんていう感情は、父さんと母さんがいなくなった時からすでにあったのにさ――。


そう思って目を閉じていると、次第にウトウトしてきた。


そんな中だった。




ガシャンッ!!


静かな空間を突き破る、大きな音がした。

オレはびっくりして跳ね起きた。

窓を見れば、お日さまはてっぺんで輝いている。

時間は、もうすぐお昼だろう。


――と、いうことは。

今はもう、一階にある病院は片付けをしている真っ最中か?

だったら、あの物音が何なのかは分かる。

たぶん、おっちょこちょいの加奈子がまた何かを落としたんだ。


オレは地面に足を着けると、ふたたび階段を下りた。

二階のキッチンの扉を開けたら、誰もいない。

テーブルの上には、真っ白いご飯と焼いてあるサケが乗った皿。

ひとり分のご飯がある。

――それは朝、最後に目にしたままの状態になっていた。

ふたりはやっぱり一階の事務室にいるんだろう。

確信すると、オレは一階へと足を向ける。




ふたりとも大丈夫だろうか?

怪我とかイヤだぞ?

なんて思いながら、事務所の扉を少し開けた。

それが間違いだったと気がついたのは、その後すぐ。


だって……。

加奈子は幸の胸に顔を埋め、幸の両腕は加奈子の背中に回っている。

加奈子と幸が……。



抱き合っていたんだ。





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