迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





たぶん、加奈子が、薬か何か入ったビンを落として、それを避けさせるために幸が加奈子の身体を引き寄せたんだ。

だって、その証拠に、足元には、茶色いガラスのビンが粉々に割れている。


――それだけだ。


そう言い聞かせるのに、身体が金縛りにあったみたいに、動けない。

そうかと思えば、オレの足は勝手に、幸たちがいる、その場所から遠ざかっていく。


足の怪我とか、今はどうだっていい。



……パフン。

階段を一気に駆け上がって、ベッドにうつ伏せた。

加奈子は幸が好きだと言った。

幸も加奈子を好きなのは事実だ。


好きってなに?


オレも幸、好きだよ?

オレの、『好き』と、加奈子の言う、『好き』って違う好きなの?

父さんや母さん。

それに兄ちゃんたちと同じくらい幸が好きだ。

兄ちゃんたちが女の人と抱き合ったところを見ても、やっぱり寂しいって思う。

もう、オレだけの兄ちゃんじゃないんだって、そう思うから……。


だけどさ……。


だけど…………。


幸と加奈子が抱き合ったところを見たら、胸が、ギリリって痛くなった。

悲しくなるし、今だって涙が出そうだ。

そういえば、幸があの破廉恥(はれんち)女に言い寄られていた時――。

加奈子、泣いていたっけ……。

幸のことが好きなのに、自分じゃダメなのかって……。

それって……。




ポタッ。

冷たい雫がオレの腕に当たった。





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