chapter:こいごころ たぶん、加奈子が、薬か何か入ったビンを落として、それを避けさせるために幸が加奈子の身体を引き寄せたんだ。 だって、その証拠に、足元には、茶色いガラスのビンが粉々に割れている。 ――それだけだ。 そう言い聞かせるのに、身体が金縛りにあったみたいに、動けない。 そうかと思えば、オレの足は勝手に、幸たちがいる、その場所から遠ざかっていく。 足の怪我とか、今はどうだっていい。 ……パフン。 階段を一気に駆け上がって、ベッドにうつ伏せた。 加奈子は幸が好きだと言った。 幸も加奈子を好きなのは事実だ。 好きってなに? オレも幸、好きだよ? オレの、『好き』と、加奈子の言う、『好き』って違う好きなの? 父さんや母さん。 それに兄ちゃんたちと同じくらい幸が好きだ。 兄ちゃんたちが女の人と抱き合ったところを見ても、やっぱり寂しいって思う。 もう、オレだけの兄ちゃんじゃないんだって、そう思うから……。 だけどさ……。 だけど…………。 幸と加奈子が抱き合ったところを見たら、胸が、ギリリって痛くなった。 悲しくなるし、今だって涙が出そうだ。 そういえば、幸があの破廉恥(はれんち)女に言い寄られていた時――。 加奈子、泣いていたっけ……。 幸のことが好きなのに、自分じゃダメなのかって……。 それって……。 ポタッ。 冷たい雫がオレの腕に当たった。 |