chapter:こいごころ ほっぺたに違和感がある。 コレ、何? ほっぺたを指でなぞれば、なぞった指が濡れていた。 あれ? なんで、涙? なんでオレ、泣いているの? 何が……。 そんなに悲しいの? ……ポタッ。 ポタッ……。 そうしている間にも、涙は勝手に、次から次へと流れ出てくる。 その時だった。 加奈子が、ココで泣いていた時のことを思い出した。 幸が好きだと言って、オレの頭に涙を落とした加奈子――。 『好き』って、オレ、幸のこと、加奈子と同じ、『好き』なの? それなら、幸に拒絶された時に泣きそうになったことも分かるし、いくらオレを助けるためだって言っても、神楽と同じようにオレの中心に触れられたんだ。 気持ち悪いと思うことだって絶対あって、ドーベルマンの時のように、神楽とのことや、父さんと母さんが目の前で逝(い)ったことも思い出すハズなのに、恐怖とかいう観念は全然なかった。 それはつまり……。 ああ、そうか。 オレ……。 幸のこと……。 『好き』なんだ。 実感すれば、涙は溢れ、ほっぺたを伝って、いくつもの細い線を描き、流れる……。 こんな想い、気づかなければよかった。 だってどうせ、報われない。 オレは妖狐で、幸は人間だから――。 オレは男で、幸も男だから――。 結局は、この想いは、幸に伝わらない。 無理なんだ……。 「ふっ。ゆき…………」 |