迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





どこで見たのかと考えていると、猫は塀からぴょんっと降りて、オレの足元に寄って来た。


あ、そうだ。
思い出した。


この猫はたしか、幸の病院に来た……。

「リンか?」

『ああ、そうだよ? ってか、兄貴、人間? あれ?』

リンは困惑して、オレの靴の匂いを嗅ぐ。

そうやって、妖狐の時のオレが、今のオレかどうかを確かめているんだ。


『やっぱ、兄貴だ』

猫はそう言うと、パチパチと目を瞬(しばた)いた。


「あっと……実は……」






『そっか、兄貴も大変だったんだな』

――ココは裏路地。

そのために、人通りは少ない。

ちょっとした広場みたいなココは、なんでも猫の会議場らしい。

オレは目の前の土管に腰かけ、隣にいるリンに、オレの身に起こった出来事を話した。

リンは、オレが話す内容を疑いもせず、うんうんと、うなずく。


「信用するのか?」

あまりにも疑わないから、逆にこっちが驚く。

だって、妖狐とか、そんなの、普通の動物だって知らない存在だ。

そう尋ねたら、リンは、もう一度コクンと、大きくうなずいた。


『だって兄貴、今、猫の俺と話してるぜ? それに、俺を助けてくれた時の狐と今の兄貴の匂いは一緒だしさ』


そう言うと、今度はリンがオレを信用する理由を教えてくれる。

リンは、今はあの優しそうな婆さんの世話になって、傷も綺麗に治ったこと。

それからオレを兄貴と呼んで崇拝してるってことまでたくさん話してくれた。





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