迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





大げさだと言ったら、リンは、いやいや、と首を振って命の恩人だからと力説しはじめた。

そんなリンは、今、散歩中だとか。


『そうだ。兄貴、行くあてないならさ、俺んち来いよ。婆さんならきっとわかってくれるさ』


リンは大きく目をひらいて、輝かせる。

だけど……ムリだ。

リンや婆さんに迷惑をかけることはできない。


オレは首を振って、リンの好意だけを受け取った。

今のオレは現状を忘れ、和やかな時間を過ごしていた。


ふと、空を見上げると、太陽は傾き、燃えるように真っ赤があった。


まるで……父さんと母さんが流した……血のように……。


嫌なことを思い出した瞬間だ。

突然、寒気を覚え、オレの身体が震えた。

両手を自分の身体に回して震えを止めようとするけど、それでも止めることはできない。

だからきっと、これは肉体的な寒さじゃなくて、もっと根本的な、感覚による寒さだと思った。


『兄貴?どうしたの?』

リンは、身体を丸めるオレを何事かと、様子を窺(うかが)ってくる。

次の瞬間、リンは、だけど唸り声をあげて毛を逆立てた。

どうやらリンも気がついたみたいだ。

異様な、無数に突き刺してくる針のような、冷たい殺気を含んだ空気に……。


「リン、逃げろ。ここはマズい」

オレは唸り声をあげるリンを、そっと背中に隠す。


この気配は間違いない。

神楽だ。

神楽の匂いがする。

神楽は、とうとう、オレの居場所を見つけた。





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