迷える小狐に愛の手を。
第十四話





chapter:こいごころ





今さら逃げても、きっと、もう遅い。

オレの足はこんな状態だ。

すぐに見つかってしまうだろう。


だったら、少しでも抵抗して、なんとかするしかないよな……。


『だけど、兄貴は!?』

神楽と戦う決意をしていると、リンは顔色を窺うようにオレを気遣う。


「オレは平気、この気配は……たぶん神楽だ」

『だったら余計危ないじゃん!! 兄貴をひとりにするなんて俺には!!』


「大丈夫。オレって妖狐だかんな。実は、神楽よりも強いし……それに、あいつはオレを欲しがっている。殺されはしない。

だけど、リン。お前は違う。神楽に刃向えば、お前は殺されちまう」


『兄貴!!』

縋(すが)るような視線を、後ろにいるリンから感じるけど、オレは振り向くことなく、説得を続ける。


「オレな、もう父さんや母さんみたいに目の前で誰かが殺されるの、見たくないんだ」

『だけど!!』

「な、頼むから……」

いつまでも首を横に振り続けるオレに、リンは、ようやくうなずいてくれた。


オレから背中を向け、リンは颯爽(さっそう)と走り去る。



――これでいい。

これで、誰も傷つかない。


オレは目を閉じ、近づいてくる狂気が目の前に来るのを待った。


一秒を過ぎるごとに、鋭い凍てつくような視線が、こちらへと近づいてくる。

言いようのない、凍てつくような寒さがオレを襲う。

震えが止まらない。


「っく……」





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