chapter:こいごころ 唇を噛みしめていないと、口から悲鳴が飛び出しそうだ。 今まで、オレの近くにいた神楽は、こんな狂気じみた気配は出さなかった。 いつも無口で穏やかで、それでいて、とても静かだった。 この荒れ狂うような、恐ろしい狂気を、長年押し殺していたんだと思えば、とてつもなく怖い。 オレへと近づいてくる足音が、ある程度まで近づき、止まった。 前を見ると……。 そこには、腰まである漆黒の髪を風になびかせ、鋭い紫の目でオレを射抜く神楽がいた。 「やっと見つけたよ、俺の花嫁」 神楽は低い声でそう言うと、オレに手を伸ばしてくる。 その途端、オレの意識が途絶えた。 |