chapter:蜜に溺れる身体 漆黒の瞳から放たれる凍てつく視線はまるで、鋭い刃物に姿を変え、感覚、視覚、聴覚、それらすべてを奪ってくるみたいだ。 「神楽……。お前、その格好は……」 恐怖というものに呑まれつつあったオレの言葉は掠れていて、声になっていない。 父さんと母さんが殺される前の、神楽の中に秘められた殺気は、今では恐ろしいほど分かった。 オレは、以前とは違う色をした、髪と瞳の神楽を見据える。 「ああ、この髪と目ね。黒なんて冴えないから大嫌いなんだけどさ、人間は美しい銀の髪や金の瞳なんてないだろう? だから変えてみたんだよ。 黒だと前のように気品がなくなるのはイラつくよ。 まあ、君を見つけられたんだ。良しとしよう。 古都、お前は元気そうで何よりだ」 そう言う神楽は少しも表情を変えず、ただ、冷ややかな視線を送ってくる目にオレを映すばかりだ。 そこで、オレはココがどこなのかを理解した。 オレは幸に恋心を抱き、神楽に狙われるからと、家を出た。 その後、三毛猫のリンに会って、人気のない裏路地で、リンにオレの身の上を話したところで、神楽と出くわしたんだ。 ……怖い。 身体中の血液は血管を逆流するかのように駆け巡っている気がするし、全身の毛穴は大きく広がり、冷たい汗が吹き出すみたいだ。 あまりの恐怖がオレを襲う。 オレは、押し寄せてくるその恐怖に抗おうと、身体を動かした。 だけど……。 あれっ? なんでっ!! |