chapter:蜜に溺れる身体 ――それだけ、神楽にとって両親が殺されたという事実は悲しく、そして残酷な出来事だったのだろう。 だけど……だからって……。 「両親を殺されたからって、お前も人間を殺していいってことはないだろうが!」 「古都、君は俺に反発するんだね……花嫁は花嫁らしく、俺に従え」 花嫁? 誰が花嫁だよ!! 勝手にオレを縛り付けたくせに。 勝手に自分の物にしようとしてるくせに!! 「ふざけんな!! オレは誰の指図も受けねぇ!!」 「そう。それなら、言うことを訊いてくれるようにするまでだ」 神楽の言葉に耳を貸すことなく暴れまくるオレに、神楽は背中を向けた。 ……コトリ。 後ろにあったタンスの引き出しを静かに開ける。 すると、中から何かを取り出した。 それは、掌(てのひら)ほどの小さな桃色をした、平べったいビンだ。 ――いやだ。 やばい。 なんか、ものすごくイヤな予感がする。 オレは恐ろしいほどの危機感を感じ、ココから抜け出そうと身を捩る。 そのたびに、傷ついた足は悲鳴を上げ、激痛が全身に向かって走った。 「だめだよ古都、そんなに暴れちゃ……傷が深くなる。せっかく治りかけているというのに……」 背中を向けている神楽は、幸と同じようなセリフを吐く。 だけど、全然あたたかみを感じない。 あるのは冷たい、射るような刃と化した言葉だけだ。 |