迷える小狐に愛の手を。
第十五話





chapter:蜜に溺れる身体





――それだけ、神楽にとって両親が殺されたという事実は悲しく、そして残酷な出来事だったのだろう。

だけど……だからって……。



「両親を殺されたからって、お前も人間を殺していいってことはないだろうが!」


「古都、君は俺に反発するんだね……花嫁は花嫁らしく、俺に従え」

花嫁?

誰が花嫁だよ!!

勝手にオレを縛り付けたくせに。

勝手に自分の物にしようとしてるくせに!!

「ふざけんな!! オレは誰の指図も受けねぇ!!」


「そう。それなら、言うことを訊いてくれるようにするまでだ」


神楽の言葉に耳を貸すことなく暴れまくるオレに、神楽は背中を向けた。



……コトリ。

後ろにあったタンスの引き出しを静かに開ける。

すると、中から何かを取り出した。

それは、掌(てのひら)ほどの小さな桃色をした、平べったいビンだ。





――いやだ。

やばい。

なんか、ものすごくイヤな予感がする。


オレは恐ろしいほどの危機感を感じ、ココから抜け出そうと身を捩る。

そのたびに、傷ついた足は悲鳴を上げ、激痛が全身に向かって走った。


「だめだよ古都、そんなに暴れちゃ……傷が深くなる。せっかく治りかけているというのに……」


背中を向けている神楽は、幸と同じようなセリフを吐く。

だけど、全然あたたかみを感じない。

あるのは冷たい、射るような刃と化した言葉だけだ。





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