迷える小狐に愛の手を。
第十五話





chapter:蜜に溺れる身体





疼く身体をなんとか堪え、神楽を拒絶する。

「だれ……が、言うかよ……」


神楽なんて大嫌いだ。

強く睨み返したいのに、涙で視界が霞む。

おかげで威嚇することもできない。


これじゃあ、ただの虚勢にしか見えないだろう。

それでも、オレは抗(あらが)わなきゃいけない。

オレがオレでいられる間は、死んだって抗い続けてやるんだ。



オレは改めて決意すると、縛られていた手足に力が入る。


まだ、大丈夫。
まだ、オレはオレでいることができている。


確認するオレを、だけど神楽は薄気味悪い笑みを浮かべた。


「そうか、残念。古都が嫌だって言うなら、君はこのままだ」


オレはまだ、神楽に抵抗できている。

最後まで抵抗してやる!!

その決意は、冷淡な視線を寄越(よこ)す神楽によって、簡単にへし折られてしまった。


「俺は今から仕事に行かなければならない。この世界でモデルをしているんだよ。妖狐の力を使わなくてもね、みんな俺の言うとおりに動いてくれるんだ。まあ、ある意味、ここは面白い世界だね」


口を歪めて笑う神楽は、さらに残酷な言葉を放った。


「俺が戻ってくるまで、そうしていなさい」


神楽は……。

なんて……言ったの?




「神楽……お前……」



「おっと、そんな顔をしても無駄だよ。

素直にならない君が悪いんだ。

俺が戻って来るまでに、欲しがってくれることを祈ろう」





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