迷える小狐に愛の手を。
第十五話





chapter:蜜に溺れる身体





だけど、それは通常の人物ならの話だ。

だって、オレに話しかけている人物は、人間じゃない。

窓のところにいるのは人間じゃなくて……。

――幸の病院で手当を受けるよう、オレが説得をした、あの三毛猫リンだ。

神楽と出会う直前、別れたリンが……。

オレに、会いに来てくれた……。


動物の直観は人間よりも敏感だ。

神楽の狂気じみた気配は、猫のリンにとって、恐ろしいものだ。

それなのに、リンは身の危険も顧(かえり)みず、ここまで来てくれた。


『兄貴、よかった。殺されたんじゃないかと思ってさ……。ソレ、外すから!!』

リンはそう言うと、タン、っと窓辺からベッドの端へとジャンプした。

リンの重さでベッドのシーツが張る。


「やっ。ああああああんっ」

背中にあてがわれているシーツが擦れて身体に響く。

リンはオレの反応に驚き、身体を縮こませた。


「りん……ゆっくり……おねがっ……」

リンはオレに何が起きているのかが分からないんだろう。


今は言葉では伝えられないから、オレは胸の内で、ありがとうと告げた。


リンは、ひとつうなずくと、今度はゆっくりオレに近づいた。


『ロープ、取るね。固いから、もしかすると兄貴を傷つけるかもしれない……』

リンはオレに同意を求めてくる。

でも、たぶん痛みはないだろう。

だって、薬で身体の神経は麻痺している。

痛みは疼きに変わるだろうから。





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